戦後70年 安倍談話についての声明文

この国の未来に責任をもつために


 8月14日、安倍内閣は、戦後70年の談話を閣議決定した。


 戦後50年の村山談話、60年の小泉談話を継承するのか、あるいは首相自らの信条に基づく談話となるのか、我々は注目してきた。

 戦後、日本は、明治維新以来重ねてきた歴史の総決算ともいうべきアジア太平洋戦争が引き起こした惨禍への反省から出発して、70年の間、平和国家としての歩みを重ねてきた。歴史をどのように語るのか、「最高責任者」と公言する首相であれば、その言葉がきわめて重く、その責任が非常に大きいことを自覚していたはずである。


 戦後70年とは何だろうか。


 1945年8月15日、天皇のいわゆる「玉音放送」で、アジア太平洋戦争は終結し、日本軍は軍事行動を停止、日本国民は軍国主義の支配から解放された。(戦闘行為は一部で継続していた。)繰り返しとなるが、アジア太平洋戦争は、明治維新以来の大日本帝国の歴史の総決算であった。日本が近代化に踏み出した時、遥かかなたに欧米諸国の植民地帝国が輝いて見え、近接する蝦夷地・琉球・朝鮮・中国などの諸国の併合と植民地化によって、欧米諸国の仲間入りを目指そうとした。

 

 しかし、第1次世界大戦以後、植民地支配下の諸民族は自らの尊厳に目覚め、自立への闘いは大きなうねりとなり、時代を大きく転換させた。大日本帝国は、新しい国際秩序を構築する大きな潮流に対応できず、古い国際秩序意識、東アジア・東南アジアの諸国民への侮蔑意識を変えることができないまま、中国への侵略行為を繰り返し、イギリス・アメリカとの戦争に踏み出す誤りを犯したのだった。

 

 戦後70年とは、その大日本帝国の歴史が敗戦で終わり、廃墟の中から平和国家として歩んできた年月である。


 安倍首相は、談話の中で、日露戦争がアジア・アフリカの人々に独立・解放の希望を与えたと誇るが、その戦争が朝鮮の独立を踏みにじり、希望を奪ったという事実を省みていない。植民地支配を欧米諸国の専有であるかのように、侵略とは欧米諸国が非欧米諸国に対して行った行為であるかのように語るばかりである。

 女性の尊厳を傷つけたことに触れているが、その責任が日本・日本軍にあることを認めていない。

 アジアの人びとを苦しめ、数知れない犠牲をだしたのが、植民地支配者・侵略者としての日本・日本軍の行為であったということへの明確な反省もなく、お詫びもなかった。

 戦後の日本がかつての敵国、被害を与えた周辺諸国と関係を結び直し、国際社会に迎えられたことに感謝の言葉を述べているが、表向きの反省のその陰で侵略の事実、加害の事実を歴史の闇に押し込めようと、保守勢力が教科書検定など歴史教育に介入しようとしてきたことは、アジア諸国から厳しく批判されてきた。


 一体、何のための談話なのか。誰のための談話なのか。


 安倍首相は、「我が国」、「私たち」という主語でしか戦争について語っていない。これでは首相自身が日本の歴史に向き合い、本音でその反省を述べていることになっていない。

 

 今国会で国民の切実な反対の声に耳を傾けることなく、戦争法案の成立を目論んでいる安倍首相が「積極的平和主義」を語る談話から、過去に真摯に向き合い、歴史から学び、「深い反省」を抱いて、真に平和的なやり方でアジア諸国との絆を強め、諸国民の福祉に貢献しようという明白な意思をくみ取ることはできない。

 次の世代に平和な世界を引き継ぐためにも、私たち神奈川県歴史教育者協議会は、歴史に対する責任、未来に対する責任をないがしろにした今回の安倍談話に抗議の意思を表すものである。

                   

2015年8月23日        

 

           神奈川県歴史教育者協議会事務局



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